透析を始めて、三十数年経ちますがその間私が経験した合併症を中心にお話しします。
不均衡症候群
体が透析にまだ慣れていない、透析導入期によくみられます。
腹痛・吐き気・嘔吐・倦怠感・手足のつり症状などです。
透析を行うことで体内の血液中の老廃物が急激に除去されてきれいになりますが、脳の中の老廃物は
除去されにくく、体と脳との間に濃度差が生じます。そのため、脳の中の老廃物を薄めようとして脳
は水をどんどん吸収するため、脳がむくみ、脳の内圧が高くなることで引き起こされる症状です
高血圧
水分や塩分の摂りすぎにより、それらが十分に排泄されず体液量が増加することで起こります
高血圧は動脈硬化・心臓病・脳卒中・視力障害(眼底出血)などの原因にもなります。
貧血
腎臓で作られている造血ホルモンの分泌が低下し、貧血になります
症状は、立ち眩み・疲れやすくなる・手足のだるさ・息切れ・動悸などです
大半は、エリスロポエチンや鉄剤の注射などで改善されます
異所性石灰化
リンとカルシウムの蓄積で石灰化が生じます。
沈着部位によりさまざまな臓器障害をもたらします。
動脈硬化、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞や脳出血などのリスクが高まります。
リンを多く含む食品を控えリン吸着剤を適切に服用することが大事です。
心疾患障害
虚血性心疾患
心臓の筋肉に栄養を送る血管(冠動脈)がつまって、突然の胸痛や冷や汗などがみられます
不整脈
透析によって体内の水分が除水され、水分量や電解質の量が変化することにより、交感神経が活性化され、不整脈が起こりやすくなります
心不全
透析患者は尿が出にくく、水分や塩分が体に溜まるため、心臓は体液を循環させるために大きな負担を強いられています。働きすぎた心臓は心臓疾患になりやすく、ひどい場合は心臓のポンプ機能がうまく働かなくなる心不全に陥ります 心不全の症状は、呼吸困難や息切れ、むくみ、せき、たんなどさまざまです。心不全を防ぐには、塩分制限や降圧薬の使用などによって、しっかりと血圧を管理し塩分や水分の過剰摂取を控え、体内に溜まった塩分や水分を透析で適切に取り除くことが重要です。
副甲状腺機能亢進症
腎臓でリンを尿中に排泄できなくなり、血液中のリン濃度が上昇します。
リンの増加によって、カルシウムと結合しやすくなり、血中の遊離カルシウム濃度が低下します 副甲状腺は、血液中のカルシウム濃度を上げようとして、副甲状腺ホルモン(PTH)を過剰に分泌します
副甲状腺がPTHを過剰分泌することにより、副甲状腺機能亢進症が発症します。
骨の病気:骨がもろくなり、骨折しやすくなる。
血管の石灰化:血管にカルシウムが沈着し、動脈硬化を促進する。
痒み:カルシウム・リン代謝の乱れが原因で、全身がかゆくなります。
血液検査でのPTHの値に注意しましょう。
上記に挙げた合併症以外にも透析年数や、ほかの疾病との関係でいろいろな合併症が考えられます。
日頃から十分な透析を心がけ血液検査結果にも気を配りましょう。